平成25年5月17日
国外債務者に対する不良債権の処理について
新聞報道によると、中国(中華人民共和国)でも不良債権が増加しており、不良債権への対応が今後の課題になっているとのことです。そこで日本企業が中国の取引先(国外債務者)に対して保有している債権の回収が見込まれなくなった場合や債権が貸倒れた場合の不良債権処理について取り上げてみたいと思います。
まず、債権の回収が見込まれなくなった場合の貸倒引当金の計上についてですが、対象となる債務者から国外債務者が除かれていないため国外債務者を国内債務者と異なる取り扱いにする必要はなく、法人税法52条による個別評価引当金及び一括評価引当金の計上が認められると考えます。ただし、法人税法施行令96条1項1号又は3号による個別評価引当金の計上については、外国の法制と日本の法制が異なるため外国の法制が日本の法制と類似しているか比較検討する必要があり、日本の法制と同様の事由が生じていれば計上が認められます(法人税基本通達11-2-12)。また、法人税法施行令96条1項2号による個別評価引当金の計上については、同号に規定する事由が生じていれば、国外債務者に対する債権についても計上が認められると考えます。
次に、債権が貸倒れた場合の貸倒損失の計上についてですが、上記の貸倒引当金と同様の趣旨から、法人税基本通達9-6-1による計上については日本の法制と同様の事由が生じていれば、法人税基本通達9-6-2又は9-6-3による計上については同通達に規定する事由が生じていれば、国外債務者に対する債権についても計上が認められると考えます。
また、国外債務者が子会社等(国外関連者)であり、子会社等を支援するために債権放棄した場合において、債権放棄をしたことについて相当な理由があると認められないときは、その債権放棄により供与する経済的利益の額は寄附金の額に該当し、その全額が損金不算入となるため注意が必要です(租税特別措置法66条の4第3項、法人税基本通達9-4-2)。なお、この場合の子会社等は内国法人ではないため、子会社等との間に完全支配関係があったとしてもグループ法人税制の寄附等の取扱いはありません(法人税法25条の2第1項、37条2項)。
中国の倒産法の基本法は「企業破産法」ですが、清算型手続である「破産清算」だけではなく、再建型手続である「重整」、「和解」についても規定されているようです。なお、「重整」は「更生」「再生」、「和解」は「和議」と通常訳されています(TMI総合法律事務所「中国最新法令情報」参照)。内容が日本の法制と完全に一致するわけではないので単純比較は難しいですが、日本の法制と比較すると概ね次の図のようになります。
日本と中国の倒産法の比較
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日本 |
中国 |
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再建型倒産手続 |
会社更生法 |
会社更生 |
企業破産法 |
重整・和解 |
民事再生法 |
会社再生 |
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清算型倒産手続 |
破産法 |
破産 |
破産清算 |
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会社法 |
特別清算 |