平成25524

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更正の請求・更正の申出について

 

平成2312月の税制改正により更正の請求の期間が延長され、法定申告期限から1年であったものが、法定申告期限から5年に延長されています(国通法23@)。ただし、この延長は、平成23122日以後に法定申告期限が到来する国税について適用されますので(平成2312月改正法附則36@)、同日前に法定申告期限が到来していた国税の更正の請求はこれまで通り1年であり、その期間を徒過した場合に更正の請求をすることはできません(判決等の一定のやむを得ない事由が事後的に生じた場合を除きます:国通法23A)。

税務署長による職権更正が可能な期間であるものの、納税者による更正の請求ができない場合には、従前は「更正の嘆願」と呼ばれる実務慣行により、税務署長に職権更正を「嘆願」していたのですが、現在は、国税庁から「更正の申出書」と呼ばれる一定の書式が公表されており、これにより「更正の申出」を行うこととなります(下記リンク参照)。

なお、国税庁のパンフレット等によれば、この「更正の申出」の通りに更正されなかった場合には、不服申立てをすることはできないとされています。これはどのような理由によるものでしょうか。

更正の請求が行われた場合には、税務署長は、国税通則法の規定により、その請求を認めて更正するか、認めない場合にはその旨を通知するという「処分」をしなければなりません(国通法23C)。そして、納税者は、その「処分」に対して不服がある場合には、その「処分」の是非について不服申立てができます(国通法75@)。一方、「更正の申出」の場合には、法律上の根拠のない国税庁の任意の制度であり、税務署長は、その申出を認めない場合にその旨を通知するという「処分」を行う必要はありません。不服申立ての対象となる「処分」がない以上、納税者は「更正の申出」の通りに更正がされなかったとしてもそれについて争うことはできないということになります。

また、国税通則法における不服申立てのほかに、行政不服審査法において行政庁の「不作為」についても不服申立てができることとされています(行審法7)。しかしながら、この場合の「不作為」とは、「行政庁が法令に基づく申請に対し、相当の期間内になんらかの処分その他公権力の行使に当たる行為をすべきにかかわらず、これをしないこと」とされており(行審法2A)、「更正の申出」が任意の制度によるものであって「法令に基づく申請」に当たらない以上、行政不服審査法における不服申立ての対象にもならないということになります。

 

国税庁HP:「更正の請求期間の延長等について」

http://www.nta.go.jp/sonota/sonota/osirase/encho/index.htm