平成25614

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減資等による欠損填補の税務上の取扱い

 

新聞報道によると、三菱自動車が、早期復配に向けて平成25 524 日の取締役会において、6月の株主総会で承認を得た後、8月に減資等による欠損填補を行うことについて決議したとのことです。具体的には、資本金及び資本準備金を減少させてその他資本剰余金に振り替えた後に、その大半を欠損填補に充てる予定とのことです。そこで今回のトピックスでは、減資等による欠損填補の税務上の取扱いについて解説したいと思います。

 

(1) 資本金及び資本準備金のその他資本剰余金への振替

 @ 法人税の取扱い

 資本金を減少させてその他資本剰余金に振り替えた場合には、資本金が減少し、減少額と同額の資本金等の額が増加するため、資本金等の額に変動が生じないこととなります(法人税法施行令8112号)。資本準備金を減少させてその他資本剰余金に振り替えた場合には、資本金等の額が減少し、減少額と同額の資本金等の額が増加するため、資本金等の額に変動が生じないこととなります。

 また、減資により資本金が1億円以下になり一定の中小企業や中小企業者等に該当することとなった場合には、法人税の優遇規定の適用を受けられるようになり法人税の負担が軽減されます。

 

 A 地方税の取扱い

 法人税の取扱いと同様に資本金等の額に変動が生じないため、資本金等の額の規模に応じて負担額が定められている法人住民税均等割や資本金等の額を課税標準とする法人事業税資本割に影響がありません(地方税法52条、72条の12312条)。

 また、減資により資本金が1億円以下になった場合には、法人事業税の外形標準課税の対象法人ではなくなります(地方税法722)。

 

(2) その他資本剰余金による欠損填補

 @ 法人税の取扱い

 企業会計上、「資本取引と損益取引とを明瞭に区別し、特に資本剰余金と利益剰余金とを混同してはならない」こととされていますが(企業会計原則第一  一般原則三)、「利益剰余金が負の残高のときにその他資本剰余金で補てんするのは、資本剰余金と利益剰余金の混同にはあたらないと考えられる」ことから、その他資本剰余金による欠損填補が認められています(自己株式及び準備金の額の減少等に関する会計基準61項)。

 税務上は、資本金等の額及び利益積立金額の増減規定に欠損填補に関する定めがないことからすれば、資本取引と損益取引とをより厳格に区別しているため、欠損填補の場合でも資本金等の額を利益積立金額に振り替えることは認められず、資本金等の額及び利益積立金額に変動が生じないこととなります(法人税法施行令8条、9条)。

 

 A 地方税の取扱い

 法人税の取扱いと同様に資本金等の額に変動が生じないため、法人住民税均等割については影響がありません。

 法人事業税資本割については、資本金又は資本準備金を減少させて計上したその他資本剰余金のうち欠損填補に充てた部分の金額を資本金等の額から控除することとされているため(地方税法72条の21 13号)、法人事業税資本割の負担が軽減されます。

 

(3) まとめ

 減資等による欠損填補が行われた場合には、資本金が減少し法人税の負担が軽減されることがありますし、資本金等の額が減少し法人事業税資本割の負担が軽減されます。なお、資本金が減少し法人事業税の外形標準課税の対象法人ではなくなった場合には、必ずしも税負担が軽減されるわけではないので慎重な判断が必要とされます。