平成2575

中村慈美税理士事務所HPへ戻る

取締役等による私財提供があった場合の課税の特例の適用対象者について

 

 平成25年度税制改正において、中小企業の取締役等でその中小企業の保証人となっているものが有する資産を、一定の要件を満たす私的整理手続に基づいて、平成254月1日から平成28331日までの間に、その中小企業に贈与した場合には、一定の要件を満たしているときに限り、みなし譲渡益課税を行わないとする特例が創設されています(注1)。本特例の適用対象となる取締役等とは、「内国法人の取締役又は業務を執行する社員」と規定されており、退任した取締役等による私財提供は、本特例の適用対象外となります。

 一方、法人税法59条に規定する法的整理手続や一定の要件を満たす私的整理手続があった場合の設立当初からの欠損金の損金算入制度(注2)の適用対象となる役員等とは、「内国法人の役員等(役員若しくは株主等である者又はこれらであつた者をいい、…略…)」と規定されており、退任した役員等からの私財提供益に対しても本制度の適用が認められています。

 私的整理手続により再生企業が債権放棄を受けるときは、原則としてその再生企業の経営者は退任することとされており(3)、経営責任の一環として、退任した取締役等から私財提供を受けることが考えられます。この場合において、私財提供を受けた法人は、設立当初からの欠損金の損金算入制度の適用により税負担を軽減することができるにもかかわらず、私財提供を行った取締役等は、取締役等による私財提供があった場合の課税の特例の適用が認められず税負担が生じてしまうといった不合理が生じることとなり、事業再生に支障を来たすことも考えられます。

 この不合理を解消するために、取締役等による私財提供があった場合の課税の特例においても、退任した取締役等を適用対象とする改正が望まれます。

 なお、平成25年度税制改正で創設された「直系尊属からの教育資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税」(注4)の規定の適用にあたっては、平成25330日に公布・施行された租税特別措置法施行令40条の4319項一号ロにより、教育資金管理契約(注5)の終了前に直系尊属である贈与者が死亡した場合には、その教育資金管理契約に係る残額については、「個人」からの贈与とみなすこととされたため、直系尊属からの贈与であるにもかかわらず、「直系尊属から贈与を受けた場合の贈与税の税率の特例」(注6)の適用が受けられないといった不合理が生じていましたが、平成25531日に公布・施行された租税特別措置法施行令40条の4319項四号により、平成25330日に公布・施行されたばかりの租税特別措置法施行令40条の4319項一号ロの「個人」を「直系尊属」とみなす改正が行われ、その教育資金管理契約に係る残額についても、直系尊属からの贈与として軽減税率の適用が受けられるようになっています。

()1 平成25419日の当事務所HPトピックス「平成25年度税制改正(事業再生及び組織再編関係)の解説」13-15頁を参照。

  2 平成25419日の当事務所HPトピックス「平成25年度税制改正(事業再生及び組織再編関係)の解説」9-12頁を参照。

  3 「私的整理ガイドライン」7.(5)、「中小企業再生支援協議会の支援による再生計画の策定手順(再生計画検討委員会が再生計画案の調査・報告を行う場合)」6.(5)、「RCC企業再生スキーム」7.(6)、「事業再生に係る認証紛争解決事業者の認定等に関する省令」14@四、「地域経済活性化支援機構の実務運用標準」5.Iを参照。

  4 平成2541日から平成271231日までの間に30歳未満の受贈者の教育資金に充てるためにその直系尊属が金銭等を拠出し、金融機関等に信託等をした場合には、受贈者1人につき1,500万円まで贈与税を課さないこととされています(措法7022)。

  5 教育に必要な資金を管理することを目的とする一定の契約であって、直系尊属等と金融機関等との間の信託等に関するものをいいます(措法7022A二)。

  6 平成2711日以後に直系尊属からの贈与により財産を取得した20歳以上の者に係る贈与税の額は、相続税法21条の7にかかわらず、次の表の軽減税率により計算した金額とされています(措法7024)。

本則税率(相法217

軽減税率(措法7024

基礎控除後の課税価格

税率

基礎控除後の課税価格

税率

200万円以下の金額

10

200万円以下の金額

10

200万円を超え300万円以下の金額

15

200万円を超え400万円以下の金額

15

300万円を超え400万円以下の金額

20

400万円を超え600万円以下の金額

20

400万円を超え600万円以下の金額

30

600万円を超え1,000万円以下の金額

30

600万円を超え1,000万円以下の金額

40

1,000万円を超え1,500万円以下の金額

40

1,000万円を超え1,500万円以下の金額

45

1,500万円を超え3,000万円以下の金額

45

1,500万円を超え3,000万円以下の金額

50

3,000万円を超え4,500万円以下の金額

50

3,000万円を超える金額

55

4,500万円を超える金額

55