平成25712

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その他資本剰余金を原資とする配当について

 

平成25614日のトピックスでは、その他資本剰余金を欠損填補に充てた場合の取扱いについて解説しました。今回は、その他資本剰余金を原資とする配当を行った場合の取扱いについて設例により解説したいと思います。

 

1 設例

内国法人A社(非上場会社)は、その他資本剰余金を原資として1株当たり10円の配当を行いました。A社の配当(払戻し)直前の資本金等の額は60,000円であり、前事業年度末の簿価純資産価額のうちに配当により減少した資本剰余金の額の占める割合(純資産減少割合)は0.1であり、源泉徴収手続きは適正に行われています。

A社の株主である内国法人B社は、A社の発行済株式総数1,000株のうち250株を配当等の額の支払効力発生日以前6月以上保有しています。また、B社は、A社株式を関連会社株式として保有しており、A社株式の帳簿価額は14,000円であり、受取配当等の益金不算入の規定に係る控除負債利子はありません。この場合にA社及びB社の取扱いはどうなるでしょうか?

 

2 解説

 (1) A

  @ 会計上の取扱い

 

    配当支払総額が10,000円(10円×1,000株)であり、その他資本剰余金が10,000円減額されます。

その他資本剰余金を原資とする配当に係る源泉所得税は、配当支払額のうちみなし配当部分にのみ課税されます(所得税法241項、2513号、1742号、1811項、2123項)。その他資本剰余金を原資とする配当は、資本の払戻しに該当し(所得税法2513号)、配当支払額のうち、払戻法人の払戻し直前の資本金等の額に純資産減少割合を乗じて計算した金額を払戻法人の払戻しに係る株式の総数で除し、株主等が払戻し直前に有していた払戻法人の株式数を乗じて計算した金額(対応資本金等の額)を超える部分の金額が、みなし配当金額に該当します(所得税法施行令6123号)。また、源泉徴収税率は20%であり(所得税法1822号、21322号)、平成2511日から平成491231日までの間は、源泉所得税の2.1%相当額の復興特別所得税が併せて課税されます(復興財源確保法28条)。

本設例において、配当支払総額のうち対応資本金等の額6,000円(60,000円×0.1×1,000/1,000株)を超える部分の金額4,000円(10,000円−6,000円)がみなし配当金額となり、源泉所得税額(復興特別所得税を含む)が816円(4,000円×20%×102.1%)となります。

 

  A 税務上の取扱い

 

    上記@のとおり、その他資本剰余金を原資とする配当は、資本の払戻しに該当し(法人税法2413号)、資本金等の額から資本の払戻しに係る減資資本金額(払戻し直前の資本金等の額×純資産減少割合)が減額されます(法人税法施行令8116号)。また、配当支払総額が資本の払戻しに係る減資資本金額を超える場合には、利益積立金額からその超える部分の金額が減額されます(法人税法施行令9111号)。

本設例においては、資本の払戻しに係る減資資本金額が6,000円(60,000円×0.1)、配当支払総額のうち減資資本金額を超える部分の金額が4,000円(10,000円−6,000円)となるため、資本金等の額が6,000円、利益積立金額が4,000円減額されます。

   なお、源泉所得税の取扱いは上記@と同様です。

  

  B 別表4の調整

    本設例の取引に係る別表4への記載はありません。

 

  C 別表5(1)の調整

    別表5(1)に次の記載が必要となります。

 

(2) B

    @ 会計上の取扱い

 

    株主がその他資本剰余金を原資とする配当を受けた場合、配当の対象となる有価証券が売買目的有価証券である場合を除き、原則として配当受領額を配当の対象である有価証券の帳簿価額から減額することとされます(その他資本剰余金の処分による配当を受けた株主の会計処理3項)。

本設例においては、A社株式は、関連会社株式であり売買目的有価証券に該当しないため、A社株式の帳簿価額から配当受領額2,500(10円×250)が減額されます。

      みなし配当金額が下記Aより1,000円となるため、源泉所得税額(復興特別所得税を含む)が204円(1,000円×20%×102.1%)となります。

  

  A 税務上の取扱い

 

    配当受領額のうち対応資本金等の額を超える部分の金額は、みなし配当に該当し、受取配当等の益金不算入の規定が適用されます(法人税法2311号、2413号、法人税法施行令2313号)。

本設例においては、配当受領額のうち対応資本金等の額1,500円(60,000円×0.1×250/1,000株)を超える部分の金額1,000円(2,500円−1,500円)がみなし配当金額となります。また、B社は25%以上のA社株式を配当等の額の支払効力発生日以前6月以上保有しているため、A社株式が関係法人株式等に該当し、さらに控除負債利子がないため、みなし配当金額1,000円が益金不算入となります(法人税法234項、6項、法人税法施行令22条の311号)。

資本の払戻しに係る譲渡対価の額は、みなし配当金額を控除した金額とされ、1,500円(2,500円−1,000円)となり、資本の払戻しに係る譲渡原価の額は、A社株式の帳簿価額に純資産減少割合を乗じて計算した金額とされ、1,400円(14,000円×0.1)となるため、譲渡利益額100円(1,500円−1,400円)が益金の額に算入されます(法人税法61条の21項、第17項、法人税法施行令119条の91項)。

源泉所得税額204円は、みなし配当に係るものであるため、A社株式の保有期間にかかわらず、所得税額200円が法人税額から控除され(法人税法681項、法人税法施行令140条の212号)、復興特別所得税額4円が復興特別法人税額から控除されます(復興財源確保法491項、復興特別法人税に関する政令51項)。なお、所得税額及び復興特別所得税額の控除の適用を受ける源泉所得税額は、損金の額に算入されません(法人税法40条、復興財源確保法63条)。

  

  B 別表4の調整

    別表4に次の記載が必要となります。

 

 C 別表5(1)の調整

     別表5(1)Tに次の記載が必要となります。なお、本設例の取引に係る別表5(1)Uへの記載はありません。

 

3 まとめ

  その他資本剰余金を原資とする配当は、資本の払戻しとして、配当した法人において資本金等の額の減少を認識し、法人株主において有価証券の譲渡損益を認識する点に特徴があると考えられます。また、法人株主にとって、有価証券の保有期間にかかわらず、源泉所得税額の全額を法人税額及び復興特別法人税額から控除できる点は、メリットであると考えられます。