平成25726

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無対価吸収合併の適格要件について

 

 新聞報道によると、角川グループホールディングスは、経営資源の集約化を目的として、平成25101日付で連結子会社9社を無対価で吸収合併(以下、「本合併」といいます。)するとのことです。今回のトピックスでは、本合併が適格合併に該当するのか否か検討してみたいと思います。

 

(1) 本合併前の組織図

 

(2) 本合併が適格合併に該当するのか否かの検討 

 @ S1社〜S7社との無対価吸収合併について

   税制上、複数の法人を被合併法人とする吸収合併が同日に行われた場合には、個々の合併ごとに適格判定を行うことになると考えられています(国税庁文書回答事例「三社合併における適格判定について」)。

   また、無対価の場合の適格要件として、合併法人と被合併法人との間に完全支配関係(合併法人が被合併法人の発行済株式等の全部を保有する関係に限られます。)がある場合という要件(以下、「無対価適格要件」といいます。)があります(法人税法施行令4条の321号)。

   よって、当該各合併時において、合併法人である角川グループホールディングス(以下、「KGH」といいます。)は、被合併法人である各連結子会社(S1社〜S7社)の発行済株式等の全部を保有しており、無対価適格要件を満たすため、当該各合併は適格合併に該当すると考えられます。

 

 A S8社との無対価吸収合併について

   上記@の合併(以下、「第1合併」といいます。)の効力が生じた後に、S8社を消滅会社としKGHを存続会社とする合併(以下、「第2合併」といいます。)の効力が発生する予定であるため、第2合併の効力発生の直前時には、KGHS8社の発行済株式等の全部を保有する予定とのことです。

   税制上、複数の法人を被合併法人とする吸収合併が同日に行われ、その個々の合併に順序が付されている場合、その順序どおり合併が行われたものとして適格判定を行うことになると考えられています(前掲の国税庁文書回答事例)。

   よって、第2合併時において、合併法人であるKGHは、被合併法人であるS8社の発行済株式等の全部を保有しており、無対価適格要件を満たすため、第2合併は適格合併に該当すると考えられます。

 

 B S9社との無対価吸収合併について

   第1合併の効力が生じた後に、S9社を消滅会社としKGHを存続会社とする合併(以下、「第3合併」といいます。)の効力が発生する予定であるため、第3合併の効力発生の直前時には、KGHS9社の発行済株式等の全部を保有する予定とのことです。

   上記Aと同様に考えると、第3合併時において、合併法人であるKGHは、被合併法人であるS9社の発行済株式等の全部を保有しており、無対価適格要件を満たすため、第3合併は適格合併に該当すると考えられます。 

 

(3) まとめ

   本合併は、個々の合併時において、合併法人であるKGHが被合併法人となる各連結子会社9社の発行済株式等の全部を保有しており、無対価適格要件を満たすため、適格合併に該当すると考えられます。