平成251015

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公益法人関係税制について

 公益法人改革による移行期間の満期が平成251130日に迎えようとしています。そこで今回は、公益法人関係税制について解説したいと思います。

 

1 公益法人制度の概要

 公益三法(一般社団法人及び一般財団法人に関する法律、公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律(以下「公益認定法」といいます。)、一般社団法人及び一般財団法人に関する法律及び公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律(以下「整備法」といいます。)をいいます。)の施行(平成20121日)により、従前は主務官庁が一体で実施していた法人格の取得と公益性の認定が分離され、登記により法人格が取得でき、公益性の認定については行政庁(内閣総理大臣又は都道府県知事)が認定することとされています。

 この登記により法人格を取得したものが一般社団法人・一般財団法人であり、このうち申請により公益性の認定を受けたものが公益社団法人・公益財団法人となります。

 なお、公益三法の施行前の旧民法第34条に基づき設立された社団法人・財団法人(以下単に「社団法人・財団法人」といいます。)は一般社団法人・一般財団法人として存続し、公益三法の施行日から5年を経過するまでの期間(以下「移行期間」といいます。)は一般社団法人・一般財団法人、公益社団法人・公益財団法人に移行することができますが、移行期間が満了すると解散したものとみなされます(整備法404446)。

 

2 法人税法上の区分

 公益社団法人・公益財団法人は、公益法人等として取り扱われることとなります(法法2六、別表二)。

 公益性の認定を受けていない一般社団法人・一般財団法人(以下単に「一般社団法人・一般財団法人」といいます。)は非営利型法人に該当するか否かでその取扱いが異なります。非営利型法人とは、一般社団法人・一般財団法人のうち、@非営利性が徹底された法人(剰余金の分配を行わないことを定款に定めていること等の要件に該当する法人をいいます。)又はA共益的活動を目的とする法人(会員に共通する利益を図る活動を行うことを目的としていること、主たる事業として収益事業を行っていないこと等の要件に該当する法人をいいます。)に該当するものをいいます(法法2九の二、法令3)。

 非営利型法人である一般社団法人・一般財団法人は、公益社団法人・公益財団法人と同様に、公益法人等として取り扱われることとなりますが、非営利型法人でない一般社団法人・一般財団法人は、普通法人として取り扱われることとなります(法法2五〜九、別表二)。

(国税庁資料より)

 なお、社団法人・財団法人で一般社団法人・一般財団法人、公益社団法人・公益財団法人に移行していないもの(以下「特例民法法人」といいます。)は、公益法人等として取り扱われることとなります(平20年改正法附則10)。

 

3 課税所得の範囲及び税率

 各法人の課税所得の範囲及び税率は次のとおりです(法法4@、766@〜B、措法4232)。

(国税庁資料を一部改変)

 公益社団法人・公益財団法人が行う学術及び科学技術の振興を目的とする事業や高齢者の福祉の増進を目的とする事業などの公益目的事業は、収益事業に含まれないこととされているため非課税となります(法法2十三、7、法令5A一、公益認定法2四、別表)。

 

4 寄附金税制

(1) みなし寄附金

  公益社団法人・公益財団法人が、収益事業に属する資産のうちから、その法人が行う公益目的事業のために支出した金額は、その収益事業に係る寄附金の額とみなすこととされています(法法37D、法令773)。特例民法法人については、収益事業に属する資産のうちからその収益事業以外の事業のために支出した金額が、その収益事業に係る寄附金の額とみなすこととされています(法法37D)。

  非営利型法人である一般社団法人・一般財団法については、この規定の適用はなく(法法37C)、これは非営利型法人でない一般社団法人・一般財団法人についても同様です。

 

(2) 寄附金の損金算入限度額

  公益社団法人・公益財団法人の寄附金の損金算入限度額は、その事業年度の所得金額の50%相当額とされています(法法37@、法令73@三イ)。

  なお、上記(1)の寄附金の額とみなされる金額(以下「みなし寄附金額」といいます。)がある場合に、その事業年度の公益目的事業の実施のために必要な金額(公益目的事業に係る一定の費用の額から一定の収益の額を控除した金額をいい、その金額がみなし寄附金額を超える場合には、みなし寄附金額相当額。以下「公益法人特別限度額」といいます。)がその事業年度の所得金額の50%相当額を超えるときは、公益法人特別限度額相当額を寄附金の損金算入限度額とする特例が設けられています(法令732、法規225)。

  また、非営利型法人である一般社団法人・一般財団法人の寄附金の損金算入限度額は、その事業年度の所得金額の1.25%相当額であり、これは非営利型法人でない一般社団法人・一般財団法人の寄附金の損金算入限度額であっても同様です(法令73@二)。特例民法法人については、その事業年度の所得金額の20%相当額が寄附金の損金算入限度額となります(法令73@三ハ)。

 

(3) 公益社団法人・公益財団法人に寄附をした場合

  公益社団法人・公益財団法人に対する寄附金は、税制上優遇措置の対象となります(法法37C、法令77三、所法78A三、所令217三)。

  法人が公益社団法人・公益財団法人に対して支出した寄附金については、一般の寄附金の損金算入限度額とは別枠で、特別損金算入限度額が設けられています(法令772)。

  個人が公益社団法人・公益財団法人に対して支出した寄附金については、寄附金の額の合計額のうち一定の金額を寄附金控除として所得から控除することができます(所法78@)。また、個人が一定の要件を満たす公益社団法人・公益財団法人に対して支出した寄附金については、上記の寄附金控除との選択により、寄附金の額の合計額のうち一定の金額をその年分の所得税額から控除することができます(措法41183@、措令26282、措規19104)。

 

  なお、特例民法法人で主務大臣の認定を受けたものに対して支出した寄附金については、特別損金算入限度額及び寄附金控除の適用を受けることができます(平20年改正法令附則12A、平20年改正所令附則13A)。

 

5 利子・配当等に係る源泉所得税

 公益社団法人・公益財団法人については、支払を受ける一定の利子・配当等に係る源泉所得税が非課税とされます(所法11@、別表一)。これは、特例民法法人であっても同様です(平20年改正法附則8)。

 一般社団法人・一般財団法人については、非営利型法人であるか否かにかかわらず、利子・配当等につき源泉所得税が課されることとなりますが、その課された源泉所得税(非営利型法人である一般社団法人・一般財団法人の収益事業以外の事業又はこれに属する資産から生じたものにつき課された源泉所得税を除きます。)は法人税から控除することができます(法法68)。

 

6 まとめ

 公益社団法人・公益財団法人、一般社団法人・一般財団法人の税制上の取扱いをまとめると次のとおりです。