平成2432

中村慈美税理士事務所HP

平成24年度税制改正(案)の解説

関連者間の利子を利用した租税回避への対応(過大支払利子税制の導入)について

 

 所得金額に比して過大な利子を関連者間で支払うことを通じた租税回避を防止するため、次の措置が講じられます。

 

 

1       新制度の内容

(1)   関連者等に係る支払利子等の損金不算入

法人の各事業年度に下記(3)イの関連者支払利子等の額がある場合において、法人の下記(3)の関連者純支払利子等の額が下記(4)の調整所得金額の50%を超えるときは、その超える部分の金額は、その事業年度の損金の額に算入しないこととされます(新措法6652@)。

 

(税制調査会資料より)

 

(2)   関連者等の範囲

 関連者等とは、次に掲げる者とされます(新措法6652A一二、政令委任)。

@ その法人との間に直接・間接の持分割合50%以上の関係にある者及び実質支配・被支配関係にある者

A その法人に資金を供与する者及びその資金の供与に関係のある者として一定の者(@の者による債務保証を受けた第三者等)

()  外国法人に限らず内国法人についても関連者に該当するものと思われますが、関連者支払利子等の額からは利子等の受領者側で我が国課税上の益金に算入されるものは除外されることとなっている((3)イ参照)ことから、本制度が適用されることとなる実質的な関連者の範囲は外国法人に限定されるものと考えられます。

 

(3)   関連者純支払利子等の額

 関連者純支払利子等の額とは、下記イの関連者支払利子等の額の合計額から下記ロの控除対象受取利子等合計額を控除した残額をいいます(新措法6652@)。

 イ 関連者支払利子等の額

関連者支払利子等の額とは、法人の関連者等に対する支払利子等()の額(その法人との間に連結完全支配関係がある連結法人に対する支払利子等の額を除く。)で、その関連者等の課税対象所得(その関連者等が個人又は法人のいずれに該当するかに応じ、それぞれその関連者等の所得税又は法人税の課税標準となるべき所得として一定のものをいう。)に含まれないもののうち、特定債券現先取引等(新措法665D八)に係るものとして一定の金額以外の金額をいいます(新措法6652A、政令委任)。

() その支払う負債の利子(これに準ずる一定のものを含む。)その他一定の費用又は損失をいい、その範囲は、利子、利子に準ずるもの(リース取引に係る利息相当額を含む。)及び関連者保証による借入れに伴う保証料等とされます(新措法6652A、政令委任)。

 ロ 控除対象受取利子等合計額

控除対象受取利子等合計額とは、その法人のその事業年度の受取利子等(1)の額の合計額(2)をその事業年度の関連者支払利子等の額の合計額のその事業年度の支払利子等の額(上記イの特定債券現先取引等に係るものとして一定の金額を除く。)の合計額に対する割合で按分した金額として一定の金額をいいます(新措法6652B、政令委任)。

  ()1 その支払を受ける利子(これに準ずる一定のものを含む。)をいい、その範囲は、利子及び利子に準ずるもの(リース取引に係る利息相当額を含む。)とされます(新措法6652B、政令委任)。

    2 その法人が関連者等である居住者、内国法人又は国内に恒久的施設を有する非居住者若しくは外国法人から受ける利子等(国内関連者受取利子等という。)の額は、原則としてその事業年度の受取利子等の額の合計額に含まれないものとされます。ただし、これらの関連者等が非関連者等又は国内に恒久的施設を有しない非居住者若しくは外国法人から利子等の支払を受ける場合には、その金額は、国内関連者受取利子等の額を限度として、その事業年度の受取利子等の額の合計額に含まれるものとされます(政令委任)。

(4)   調整所得金額

 調整所得金額とは、関連者純支払利子等の額と比較するための基準とすべき所得の金額として一定の金額をいい、その事業年度の所得金額に、関連者純支払利子等、減価償却費等及び受取配当等の益金不算入額等を加算し並びに貸倒損失等の特別の損益について加減算する等の調整を行った金額とされます(新措法6652@、政令委任)。

 

(5)   超過利子額の損金算入

 各事業年度の関連者純支払利子等の額が調整所得金額の50%に満たない場合において、その事業年度開始の日前7年以内に開始した事業年度に上記(1)の適用により損金不算入とされた金額(この規定により既に損金の額に算入されたものを除く。以下、超過利子額という。)があるときは、その関連者純支払利子等の額と調整所得金額の50%に相当する金額との差額を限度として、その事業年度の損金の額に算入することとされます(新措法6653@)。

 

(6)   適用除外基準

 次のいずれかに該当する場合には、上記(1)の規定は適用しないこととされます(新措法6652C)。

 @ その法人のその事業年度における関連者純支払利子等の額が1千万円以下であること

 A その法人のその事業年度における関連者支払利子等の額の合計額が支払利子等の額(その法人との間に連結完全支配関係がある連結法人に対する支払利子等の額及びその法人に係る関連者等に対する支払利子等でその支払を受ける関連者等の課税対象所得に含まれるものを除く。)の50%以下であること

 

(7)   連結納税における本制度の適用

 連結納税における本制度は、以下のとおり、連結グループを一体として適用するものとされます。

 イ 損金不算入額

  () 連結法人の各連結事業年度に関連者支払利子等の額がある場合において、各連結法人の関連者支払利子等の額の合計額から控除対象受取利子等合計額(グループ内の他の連結法人からの受取利子等を除く。)を控除した残額が、連結調整所得金額の50%を超えるときは、その超える部分の金額はその連結事業年度の損金の額に算入しないこととされます(新措法68892@〜B、政令委任)。

  () 連結調整所得金額の計算における調整は、原則として単体納税の場合と同様とされます。ただし、グループ内の他の連結法人からの受取配当等に係る益金不算入額等については加算の対象としない等の調整を行うものとされます(政令委任)。

 ロ 適用除外基準

   次のいずれかに該当する場合には、本制度は適用しないこととされます(新措法68892C)。

  @ 各連結法人のその連結事業年度における関連者純支払利子等の額の合計額が1千万円以下であること

  A 各連結法人のその連結事業年度における関連者支払利子等の額の合計額が各連結法人の支払利子等の額(その連結法人との間に連結完全支配関係がある他の連結法人に対する支払利子等の額及びその連結法人に係る関連者等に対する支払利子等でその支払を受ける関連者等の課税対象所得に含まれるものを除く。)の合計額の50%以下であること

 

(8)   他の制度との関係

 イ 本制度と過少資本税制との適用関係

   本制度と過少資本税制の双方が適用となる場合には、その計算された損金不算入額のうちいずれか多い金額が当期の損金不算入額とされます(新措法665C、6652F)。

 ロ 本制度と外国子会社合算税制との適用関係

  内国法人が関連者である外国子会社等に対して支払った利子等につき外国子会社合算税制と本制度の双方が適用となる場合には、本制度による損金不算入額(その外国子会社等に対する支払利子等に係る部分に限る。)から外国子会社合算税制による合算所得(その外国子会社等に係るものに限る。)に相当する金額を控除する等の調整を行うものとされます(新措法6652G、6653A、政令委任)。

ハ 連結納税制度においても上記イ、ロと同様の措置が講じられます(新措法6889C、66892FG、66893A)。

 

(9)   その他

 イ 上記(5)もしくは上記(8)ロの適用がある法人を合併法人とする適格合併が行われた場合又はその法人との間に完全支配関係(その法人による完全支配関係又は同一の者により完全支配される法人相互の関係に限る。)がある他の法人でその法人が発行済株式若しくは出資の全部若しくは一部を有するもの(内国法人に限る。以下、分配法人という。)の残余財産が確定した場合において、その適格合併に係る被合併法人又はその分配法人がその適格合併の日又はその残余財産の確定の日の翌日前7年以内に開始した各事業年度において生じた一定の超過利子額(引継対象超過利子額という。)を有するときは、その引継対象超過利子額を合併法人又はその法人(内国法人に限る。)に引き継ぐものとされます(新措法6653B)。

なお、連結納税制度においても同様の措置が講じられます(新措法68893B二)。

 ロ その他所要の措置が講じられます

 

(税制調査会資料より)

 

 

2       適用時期

 上記の制度((9)イを除く。)は、平成2541日以後に開始する事業年度分の法人税について適用されます(改正法附則1五、1828)。

 上記(9)イの制度は、適格合併又は残余財産の確定の日が平成2541日以後の日である場合について適用されます(改正法附則29)。

なお、連結納税制度においても同様です(改正法附則1五、183940)。

 

 

(参考)

1       過少資本税制の概要

 内国法人が、各事業年度において、国外支配株主等 (1又は資金供与者等 (2に一定の負債の利子を支払う場合において、その事業年度のその国外支配株主等及び資金供与者等に対する負債(利子の支払の基因となるものに限る。)に係る平均負債残高がその国外支配株主等の内国法人に対する資本持分の3倍に相当する金額を超えるときは、その内国法人がその国外支配株主等及び資金供与者等に支払う負債の利子(その支払を受ける者の課税対象所得に含まれるものを除く。)の額のうち、その超える部分に対応するものとして一定の方法により計算した金額は、その内国法人のその事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入しないこととされています(措法665)。

 ただし、その内国法人のその事業年度の総負債(利子の支配の基因となるものに限る。)に係る平均負債残高がその内国法人の自己資本の額の3倍に相当する金額以下となる場合には、この制度は適用されません(措法665@ただし書)。

()1 非居住者又は外国法人で、内国法人との間に、その非居住者又は外国法人がその内国法人の発行済株式等の50%以上を直接又は間接に保有する関係その他一定の特殊の関係のあるものをいいます(措法665C一)。

   2 内国法人に資金を供与する者及びその資金の供与に関係のある者として一定の者をいいます(措法665C二)。

 

2       外国子会社合算税制の概要

 次に掲げる内国法人に係る外国関係会社 (1であって、法人の所得に対して課される税が存在しない国又は地域に本店又は主たる事務所を有するもの又はその各事業年度の所得に対して課される租税の額がその所得の金額の20%以下であるもの(特定外国子会社という。)が、適用対象金額(2を有する場合には、その適用対象金額のうちその内国法人の有するその特定外国子会社等の直接及び間接保有の株式等の数に対応するものとしてその請求権の内容を勘案した一定の方法により計算した金額(課税対象金額という。)は、その内国法人の収益の額とみなしてその各事業年度終了の日の翌日から2月を経過する日を含むその内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上、益金の額に算入することとされています(措法666@、措令3914@)。

 @ その有する外国関係会社の直接及び間接保有の株式等の数のその外国関係会社の発行済株式等に占める割合その他一定の数の割合(直接及び間接の外国関係会社株式等の保有割合という。)が10%以上である内国法人

A  直接及び間接の外国関係会社株式等の保有割合が10%以上である一の同族株主グループに属する内国法人(@に掲げる内国法人を除く。)

()1  外国法人で、その発行済株式等のうちに居住者及び内国法人並びに特殊関係非居住者(居住者又は内国法人と一定の特殊の関係のある非居住者をいう。)が有する直接及び間接保有の株式等の数の合計数の占める割合(その外国法人が議決権の数が1個でない株式等を発行している法人等である場合には、その割合と一定の割合のいずれか高い割合)が50%を超えるものをいいます(措法666A一)。

   2 特定外国子会社等の各事業年度の決算に基づく所得の金額につき法人税法及び租税特別措置法による各事業年度の所得の金額の計算に準ずるものとして一定の基準により計算した金額(基準所得金額という。)を基礎として、一定の方法により、その各事業年度開始の日前7年以内に開始した各事業年度において生じた欠損の金額及びその基準所得金額に係る税額に関する調整を加えた金額をいいます(措法666A二)。