平成25222

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債権法改正と貸倒損失

新聞の一部報道によると、今後の民法における債権法改正に関する中間試案に債権の短期消滅時効の廃止が盛り込まれることが明らかになったとのことです。

短期消滅時効とは、一般の債権の消滅時効の10年(民法167@)よりも短く規定された消滅時効をいい、その債権の種類に応じていくつかに分かれています。例えば、医師の診療報酬債権、工事の設計施工等に関する債権は3年であり(民法170)、生産者・卸売商人・小売商人の代金債権等は2年であり(民法173)、旅館の宿泊料・飲食料等の代金債権は1年です(民法174)。上記の中間試案では、この3年ないし1年の短期消滅時効が廃止されて一本化される案が盛り込まれる(5年に統一する案を含めて複数案が併記される)とのことです。

この短期消滅時効と税務の関係を考えてみると、例えば、貸倒損失の計上に関する法人税基本通達9-6-3が連想されます。この通達は、継続的に発生する売掛債権について、取引停止後1年以上経過した場合等に貸倒損失の計上を認める規定ですが、これは、上記の短期消滅時効の存在を考慮しつつ定められているようであり、例えば、昭和55年の通達改正時の国税庁法人税課係長による解説(税務弘報別冊(昭和56430日発行)59頁)においてその旨が述べられています。

仮に短期消滅時効が廃止されたとしても、直ちにこの通達の取扱いに影響が及ぶとは考えにくいですが、税務は基本的に民商法の規定を前提としてその取扱いが決まるものであり、税務に携わる者においては、民商法の改正についても注意深くその動向を見守る必要があります。